引用 23 9月 160リアクション

私が近著『ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること』(青土社刊)で言いたかったことは、とにかくテクノロジーのプラスの面ばかりを見るなということだ。コストやマイナス面にも注意を払え!ということだ。

たとえば、われわれは、単語は単語だから、オンラインで読もうが、印刷された本で読もうが、同じだとすぐに結論付けてしまう。しかし、本をテクノロジーと定義して、それをコンピュータ画面で読む場合と比較検証すると、(われわれの脳が受ける影響は)じつはかなり違うことが分かる。

――どう違うのか。

端的に言えば、印刷された本の素晴らしいところは、われわれを“注意散漫”にさせないことだ。本を読むということは、静止した対象に向かい直線的にひたすら注意や思考を持続させなければならないということだ。だからこそ、われわれは印刷されたページをめくりながら本を読むとナラティブ(物語)に非常に深いところで関わることになり、深く議論することができるようになる。対照的に大量の競合する情報や刺激に溢れているインターネットやコンピュータ画面上で(本を読むと)まったく逆のことが起きやすい。要するに、注意散漫に陥りやすいのだ。

――つまり、あなたはアップルの「iPad」には批判的な立場ということか。

こう答えよう。私も、インターネットやコンピュータなどの情報テクノロジーに良いところがあることは認める。迅速に大量の情報を収集できることは、テクノロジーの進歩だ。

また、私は電子書籍への流れを止めるべきだと語っているわけではない。現実問題として、経済性と利便性を考えれば、潮流がそちらに向かっていることは明白であり、それは不可逆であろう。私が言いたいことは、オンラインで本を読むことと、印刷された本で読むことは、われわれの思考プロセスにまったく異なる影響を与えるということを肝に銘じてほしいということだ。

スティーブ・ジョブズ(アップルCEO)自身、iPadを発売する直前に、こう言っている。「どうせ最近の人は本を読まないから」。良い悪いは別にして、これで彼が何を考えてiPadを作ったかが分かるだろう。

――ジョブズやグーグルは、あなたの主張をどう理解していると思うか。

ジョブズについては分からないが、少なくともグーグルは気づいていると思う。グーグルからは、私の主張について講演も頼まれた。しかし、彼らが私の主張を本当に重視しているかどうかは別問題だ。そもそも私の主張はネットであれやこれやの情報に振り回されないで、一人で集中して熟考したほうがよいというものだから、彼らに嫌われる可能性が高い。

批判しているわけではないが、アップルやグーグルはわれわれにできるだけ素早くクリックさせ続けることで儲けている。(グーグルについていえば)われわれが情報をたくさん見れば見るほど、広告も見せることができる。

彼らのイデオロギーとは、情報収集においてできるだけ効率よくあるべきだということだ。しかし、現実の姿としては、彼らはわれわれを新しいことで散漫にさせることで、おカネを稼いでいると言える。

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iPad、グーグル、ツイッターで ヒトは本当に馬鹿になりつつあるのか ~米国の著名テクノロジー思想家 ニコラス・カーが語る“ネット脳”の恐ろしさ|DOL特別レポート|ダイヤモンド・オンライン

確かに、今までニコラス・カーが一貫して言い続けてきたことは一応筋が通っているよな。デバイスは重要だよな。ここには、機能豊富なiPadよりも、読むことに専念させるデバイスであるKindleを持ち歩く「五分の理」がある。

あと、web上のソーシャルメディアの発達で、文章が短くなる傾向があるということもこのインタビューで言っているのだけれど、それって印象だけでなくて、きちんとした定量的な根拠などあるのだろうか?もちろんTwitterのtweetやメッセンジャーのメッセージを持ってきて「ほら、短いじゃん」ではなく、過去と比較可能な純文学のセンテンスを持ってきて比較しないと意味が無いと思う。僕が思うに、ワープロになってむしろ文章が長くなっている気がするんだよね。アメリカ現代文学をみても、ネットやワープロを活用しているとはあまり思えないコーマック・マッカーシーやポール・オースターはおいておいても、ジョナサン・フランゼンやリチャード・パワーズなどの人たちの文章は長いセンテンスが結構あるよね。

あとこのインタビューでも言っているけれど、ニコラス・カーはネットが人を「バカ」にするとは強く主張していなくて、集中力が散漫になるので、深い思考ができず、考えが浅くなる(“Shallow”)といっているんだよね。その意味で邦訳のタイトルは誤訳とまではいかないけれど、問題はあるだろうな。

なにより皮肉なのは、この「浅薄な」インターネットを批判する内容を持つインタビューも、広告がバシバシ動き、集中力を妨げるページ構成を持つ”shallow”なダイアモンド・オンラインに乗っているところだな。

(via kashino)

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